空中に浮く感覚は小さな時から好きで、幼い頃住んでいた家の、玄関につづく少し広めの階段を二階から五、六段ほど飛ばしては、ふわりと降りていた記憶がある。
左手は軽く手すりに乗せているが気持ちよく着地して、そのまま靴をひっかけ外に出て行く映像や足先の感覚は、夢のようでも現実として今でも思い出すのだ。鞍馬の見せ場のフィニッシュに近いかもしれない。仕事で随分ヘリコプターや小型の飛行機に乗る事がある。海の上を走るボートの並走や、車、建物、風景を撮影する為、作業上ドアを外す事もあって、それなりに興奮する。オーストラリアで見たチャーター遊覧用の機体だが、アドベンチャーな絵が僕を誘う。このとき結局乗らなかったものの、フワリとした状態は想像出来た。すこし浮いた辺りから前方に頭を傾け徐々に前に進みながら高度を上げて行く。 空へ!の乗り物だ。