パイネ国立公園を出てポルト ナタリス町に帰り、岩肌のように顔と手は焼け、ぼうぼうに生えた毛も町らしくしなければと思い、床屋に行くことにした。バーバーと言って何人かの御婦人に恥ずかしそうに聞いて、ようやく古ぼけたでも手の加えられている小さな店をみつけた。窓から中の様子がよくわかる、大丈夫かなどうしようかとうろうろとして少し曲がったベルを押した。思ったより大きな電車ホームのベルでまた更に不安になった。
小柄な奥さんが花柄のカーテンから顔をだし笑顔が突然と隠れて、何やら話して旦那が出てきた。さてここからが勇気がいったのだ。かみ合わない会話、でも親父さんは僕の頭を見ている、僕は技量と言うかこの方のセンスを疑っている。どんな頭にしたいんだと言ってるようだったので、あなたの頭ぐらいにカットと表現した。
いつの間にか奥さんも親父さん方に参戦して立っている。また生えるものだしここは任せようとアンティークな水色に塗られた椅子に座った。もちろん道具が大事、僕の目はすでにごついバリカンや分からないランプにあったが、それよりも早く彼はハサミでザキザキとバサバサと切り落としてゆく、上手さとは速さと思っているようだ。疑問のランプにライターで火をつけ、なんとごついバリカンの先をあぶって、スイッチを入れた大きな音が
耳元に近づいてきた、まるで芝刈り機ににた風きり音に思わず目を瞑った。見事に早く終わった、早く終わったことに彼も満足そうだった。もちろん奥さんもだ。これからチリの海岸を走り、ふたたびアルゼンチンの帰国の出発地、ウスアイヤにマッパを拡げてゆく。チャオ