どんな時間も大事だ。大切な時は昼も夜も朝方の闇の中でさえそんな時がある。
高齢な母の手の綺麗さに驚く。僕は母の仕草が好きだった、カップを持つ指の自然に浮き上げた小指や、力を抜いてテーブルに置かれている何気ない空間と上品さが、子供の目にも残っていた。今もその記憶がある。
朝 母は父の元に旅立った。眠るように僕らの握っていた手から離れていった。僕らにはその微かな瞬間が解った。
父もいる津軽の空は、秋風に似た冷たさがあった。その中なかよく行事を進める僕らがいた。
人も歩き続けなければならない、僕も母に旅を続ける事を誓った。